乳がん検診を受けに行こう

乳がん検診を受けに行こう ~検診は「いつか受けよう」から「いま受けよう」へ~

戸塚共立第2病院 乳腺外科部長

西澤 昌子

毎年10月になると都庁や東京タワーなど国内各地のランドマークが幻想的なピンク色にライトアップされ、ピンクリボン月間が始まります。さまざまなところでよく目にするピンクリボンですが、皆さんはその意味をご存じでしょうか?

当院もピンクリボンのライトアップを行っております

当院もピンクリボンのライトアップを行っております

はじまりは1980年代のアメリカ合衆国の小さな町に住む1人のお母さんでした。娘を乳がんで亡くし、その悲しみの中で残された幼いお孫さんにピンクのリボンを送りました。「このような悲しみを二度と繰り返さないように」とピンクのリボンに切なる願いを込めました。

そのリボンは約50年経ったいま、乳がんに関する正しい知識の普及、乳がんの早期発見・早期治療の大切さを伝える活動の世界共通のシンボルマークとして知られるようになりました。

毎年10月のピンクリボン月間は乳がん検診を推進する世界規模の啓発月間です。

早期発見・早期治療の大切さを知るために必要な3つの数字

日本の乳がん検診受診率は世界と比較すると依然として低いのが現状です。

欧米が約80%の受診率なのに対して、日本では各自治体で実施される対策型検診はわずか20~30%の受診率、企業検診や人間ドックなどの任意型検診と合わせてやっと約50%の受診率となります。乳がん検診の啓蒙活動が盛んになり、市区町村が積極的に検診を行っているにも関わらず、なぜ受診率が上がらないのか、なぜ検診を受けにいかないのか、その理由について実際にアンケート調査を行うと、こんな回答が返ってきます。

「忙しくて検診を受けに行けない」

「自分は乳がんにならないと思っている」

「なんにも症状がないから大丈夫」

「乳がんだと診断されるのが怖い」

もし皆さんが同じような理由で乳がん検診を受けていないとしたら、ぜひこの3つの数字を覚えてください。

「忙しくて検診を受けに行けない」という方へ

Key Number:40-70 /「乳がんの好発年齢は40歳~70歳」

年齢階級別罹患率

図:がん情報サービス ganjoho.jpより引用

乳がんの罹患率は30歳台後半から急激に増加し始め、40歳台後半~50歳台がピークと言われています。近年では閉経後乳がんも増えてきており、70歳台後半までそのピークは継続していきます。

40歳から70歳というと、家庭内では子育てや介護に追われていたり、社会では重要な役割を任されていたりするご年齢ではないでしょうか。

「忙しい」「時間がない」まったくその通りだと思います。

しかし、それは言い換えればあなたが社会の中で、家庭の中で、とても重要な存在だということです。だからこそ検診を受診してください。あなたがこの病に倒れたら家庭生活や社会生活に支障をきたし、その状況は国の経済的損失にもつながります。これは決して大げさなことではありません。

実際に米国ではこの病による国の損失はおよそ6千億円と報告されています。

もし乳がんが見つかったとしても早期発見であれば高い生存率のみならず、治療においても生活の質を保つことができます。ほんの数分の検査で、ほんの数十分の受診に時間を割くことで、あなたの未来を変えることができるかもしれません。

「自分は乳がんにならないと思っている」という方へ

Key Number:1/9 /「日本人女性の9人に1人が乳がんになる」

2000年代初め、乳がん罹患数が年々増加し、日本人女性の20人に1人が乳がんになるという統計が出ました。その当時、米国では8人に1人が乳がんになると言われており、日本と比較するとまだまだ少ない印象でした。しかし、2010年代に入るとさらに罹患数が増加し、今や日本でも生涯累積罹患リスクが9人に1人となりました。とうとう米国とほぼ同じ数字になったのです。

国立がん研究センターの統計では、年間約9万人が新たに乳がんと診断され、年間約1万5千人が乳がんで亡くなられています。そして女性の部位別がん罹患率は乳がんがこの30年間トップを独走状態、この現実は決して目を背けられるものではありません。

乳がんは女性にとって身近な病気であり決して他人事ではないのです。

「なにも症状がないから大丈夫」「乳がんだと診断されるのが怖い」という方へ

Key Number:95-100 /「早期乳がんの10年生存率は95%以上」

乳がんと聞くと「死に至る怖い病気」とイメージされる方も多いのではないでしょうか。しかし実際には他の部位のがんに比べて予後は非常に良好です。

令和5年3月に国立がん研究センターが公表した生存率集計では、早期乳がんであるステージ0は5年生存率、10年生存率ともに100%、ステージIは5年生存率99%、10年生存率95%となっています。

しかし、ステージⅣになると5年生存率は38.7%、10年生存率は19.4%に低下してしまいます。

やはり早期発見、早期治療が重要です。

そのためには「なんにもないから検診に行かない」ではなく「症状がなにもない」からこそ検診を受けてみてください。そして、もし早期乳がんが見つかっても決して不安になることはありません。なぜならそれは「怖い病気」ではなく乳がんはきちんと治せる病気だからです。

さいごに

毎日毎日、仕事に一生懸命、家族のために一生懸命、自分の時間を削って、いつだって誰かのために、自分の体も心も限界まで…そうやって頑張っているすべての女性に「乳がん」という病気を知って欲しいと思っています。

乳がんは「怖い病気」ではなく、早期発見で治せる「だいじょうぶ」へ、そして早期発見のために、検診は「いつかは受けに行こう」ではなく「いま受けよう」へ、その意識改革があなたとあなたの大切な人たちを幸せにします。

戸塚共立第2病院の乳腺外科外来のご案内

戸塚共立第2病院 2号館

当院の乳腺外科外来で行うこと

  • 乳がんの精査・手術
  • 術後のアフターフォロー
  • 化学療法

乳がんの治療には抗がん剤治療もあり、様々な副作用が伴うこともあります。

副作用をできるだけ軽減するための薬も積極的に使用し、適切な治療計画を立て、患者さんが納得して受けられる治療に努めております。

セカンドオピニオンなどのご希望等についても、遠慮なくお申し出ください。

乳腺外科のページはこちら >>

ジャパン・マンモグラフィーサンデー(J.M.S)のお知らせ

ジャパン・マンモ・サンデー

子育て・介護・仕事・家事などで忙しく、平日に乳がん検診を受けられない女性が、日曜日に受診できるよう、毎年10月第3日曜日に乳がん検診を受診できる環境づくりへの取り組みです。全国の医療機関と認定NPO法人J.POSHが協力して実施しています。

当院の関連施設の戸塚共立メディカルサテライト健診センター、戸塚共立第1病院附属サクラス乳腺クリニックでも10月20日(日)に乳がん検診を行います。

当日は女性医師、女性技師が担当いたしますのでお気軽にお問合せ・受診頂ければと思います。

乳がん検診コース

  1. エコー検査:3,960円(税込)
  2. マンモグラフィー検査+エコー検査:8,360円(税込)
  3. 視触診+マンモグラフィー検査+エコー検査:9,900円(税込)

※3はサクラス乳腺クリニックのみ

その他にも検診コースをご用意しておりますのでお電話にて気軽にお問合せください

 

※この記事は当法人で発行している「広報誌ひだまり」をウェブ用にリライトしたものです。